「こじつけ」のススメ
いままで「それはこじつけやで。」という言い方をしたことがありますが、実際にはどんな意味合いがあるのか疑問に思いました。
「こじつけ」の由来
「故事付け」とするものと「故実付けるの省略」とするものの、2通りの説があるようです。
「故事」と「故実」、非常に微妙ですが、故事は昔あった事柄・昔から伝わるいわれのある事柄のこと。
故実は昔の儀式・作法・服装などのさだめやならわしのこと。つまり、出来事と慣習という違いがあります。
ただいずれにしても、昔から伝わることと言う点は共通で、故事にせよ故実にせよ、無理やりこれに関連付けてもっともらしい理屈をつけるという「こじつけ」の意味に通じます。
江戸時代後期の歌舞伎・浄瑠璃・滑稽本にはよく「こじつけ」の表現が見られるので、この時期には一般に定着した言葉だったようです。
しかしながら現代においては全く無関係な2つのものを無理やり関係性があると結びつける言葉だとするほうが一般的であろうかと思います。
私もこの仕事をやり出してから「こじつけ」を用いて、それが今でも役立っていることがあります。
それは「通りの並び」です。
有名な「まるたけえびすにおしおいけ」とメジャーではないけれど「てらごこふやとみやなぎさかい」という通りの数え唄があって、会社から覚えるよう指導を受けます。
お客様からも通り名を事細かに言われることが少なくないので上記の並びを覚えることは必須なのです。
「御池車屋町を上がって。」
「千本笹屋町を東に入って下さい。」
「24号線の上板橋を下がったとこまで。」
駆け出しのころなんかは冷や汗の連続でした。
それとその頃にはまだナビなどついてません。
地図はありますが見ながら走るなんてことはできません。
(何度かチラ見しながら走っていたらわかる前に到着したことがありました笑)
そこで奥の手です。
「誠にすみません。新人なもんですから道を教えていただけませんでしょうか。」
これで多くの心優しいお客様のサポートを受けていたわけですが、やはりお金を頂戴する立場であり、いつまでも甘えていてはいけないと思い、あるエリアの通りを何とかして覚えたいと思い、それこそ「無理やり」こしらえました。
【その1 伏見編】
24号線を縦軸として名前のついている通りが7つあります。
①津地橋(つちばし)通り
②上板橋(かみいたばし)通り
③丹波橋通り
④下板橋(しもいたばし)通り
⑤毛利橋(もうりばし)通り
⑥大手筋通り
⑦油掛通り
これらの頭を適当に取って
「つちがみさん、丹下さん、毛のおおい油」
というワケのわからん文を作りました。
もう覚える為ならなりふりなど構っておれません。
【その2 西陣編】
千本通りの北大路から丸太町間に何と15本もあります。
堀川や烏丸通りにも応用できますが、そこまで延びていない通りもあります。
①鞍馬口通り
②盧山寺(ろさんじ)通り
③寺之内通り
④上立売(かみだちうり)通り
⑤今出川通り
⑥元誓願寺(もとせいがんじ)通り
⑦笹屋町通り
⑧一条通り
⑨中立売(なかだちうり)通り
⑩仁和寺(にんなじ)街道
⑪上長者町(かみちょうじゃ)通り
⑫下長者(しもちょうじゃ)通り
⑬出水(でみず)通り
⑭下立売(しもだちうり)通り
⑮椹木町(さわらぎちょう)通り
これを
「黒い寺かい。もっさい中に上下出る。下をさわらないで。」
としました。もう何でもアリです笑
口にすると恥ずかしいんですが、そのぶんインパクトがあると自画自賛しています。
上立売、下中立売、上長者、下長者とか似たような感じで、なかなか覚えられませんでした。
もとより会社にこういった覚えるための指導が存在していなかったのです。
まわりの仲間も同じようなことで苦労していましたので、この怪文を数人に伝えたところ
「ああ、昨日伏見に行くとき役にたったわ。」と言ってくれる人がいました。
作った甲斐があるというものです。
ほかに通りの並びではありませんが施設の並びも「どやったっけ?」となることがあって、ついでに作りました。
【その3 施設編】
烏丸通りの今出川・丸太町間にある施設の並び
①金剛能楽堂
②(府民ホール)アルティ
③御所西 京都平安ホテル
④KBS京都
⑤京都ガーデンパレス
⑥ザ・パレスサイドホテル
これは
「金アル? へのカッパ」
としました。
北から並べてますが全て烏丸の西側にあるので実際は丸太町から北に進むことになります。
肝は⑤と⑥はどっちがどっちやねんということなのでKBSは反映させてません。(簡単です)
「カッパ」だけで良かったんじゃという意見も聞こえてきそうですが、3作品のうち一番高い評価を得られています笑
このややこしいガーデンパレスとパレスサイドですが残念ながらパレスサイドさんは昨年5月に休業からそのまま閉業されたようです。
ややこしくてもいいので復活してもらえないものかと思っています。無くなるとやはり寂しいものです。
現在はナビがあります。
私も見ながら走らせることがありますが、見ずとも行けるほうがスマートに決まっています。
言われた目的地に対して自信満々なのと「え~と、たしかあそこのことやったかな?」とあやふなままとでは走り方が明らかに違います。
そしてその走らせ方を通じて、自信があって向かっているのか、そうでないかはお客様に伝わるものだと思います。
「運転手さん、よう道知ってんなぁ。今までで一番早いし安いわ。」と言われたときの快感のためにやっているフシもあります。
お客様を円滑にお供できるのであればナビに頼るという考えでも悪くはないと思います。
ある時、男性のお客様に「そのナビは運転手さんのためのもんやなくてお客さんのためについてるんやな。」と言われたことがあり、いたく感心したことがありました。
しかし、よりプロの仕事を目指すのであれば自分の頭にはできるだけの引き出しをもっておく必要があるのです。
そのためには多少野暮ったい方法であろうが覚えたもん勝ちという考えのもと現在に至っています。
あまり良い意味でつかわれない「こじつけ」も、そのもっていきかた次第で味方につけられるのだと感じます。
掛見